普段は明るくて職場は華やかになるけれど、一度感情的になるとコントロールが出来ない部下を持つと上司は大変ですね。特に落ち込むとしばらくは仕事が手につかない、人と会話できないようになるので上司も周りの人も扱いに非常に神経を使います。近年はHSP(Highly Sensitive Person:人一倍繊細な人)として明かりや音など環境はもちろん他者の言動や感情を感じやすい人として注目されていますが、今回は重度ではなく軽度なタイプの部下との接し方をご紹介します。上司として部下とのコミュニケーションがスムーズに行き、部下のモチベーションも上がり、あなたもストレスが減りますよ。
(イラストは鈴木景子氏の作品)
「落ち込みやすい」タイプの部下の種類
感情的になるタイプも複数の種類があります。細かいことにも目くじらを立ててすぐ怒るタイプは
>「やたら細かい質問が多い」部下 のタイプを参照願います。
やり手でプライドが高いタイプ部下は上司をおどすように怒ります。このタイプは下記を参照願います。
>上司をおどす強気の部下 苦手なタイプの部下対応法その4
今回は感情が上下し、大喜びしたり反対にすぐ落ち込みやすいタイプの部下とのお付き合いの仕方をご紹介いたします。
「落ち込みやすい」タイプの部下、お困りの事例
明田光代(32歳)さんは販売部の華です。見た目も目立つし言動も目立ちます。お客様からは評判がとても良いです。
「まあ、〇〇様 お久しぶりです。その後、いかがでしたか。お会いできてうれしいです」と1回会ったお客様のこともよく覚えており、笑顔で非常に明るい声で挨拶する。若干感情表現がオーバーですが、その明るいふるまいには社外のファンも多く、生まれながらの販売レディです。
困ったのはすこし他人の思惑を気にしすぎること。そして落ち込むと仕事が手につかなくなることです。海外の提携先のオーナーが訪問した際、よく接遇したと思いますが、商談中、面と向かってお褒めの言葉がなかったのでその後、落ち込んでいたようだ。そのオーナーは生真面目な人であまり感情を外へ出さない方だが、彼女は自分の接遇が気にいらなかったのではなかったとすごく気にしていました。3日ほどあまり元気がありませんでした。結果としては提携先は今後も当社とビジネス上のお付き合いしてくれるとメールを送ってきてくれたのだから商談は成功したのですが、それを聞いても彼女の気持ちは晴れなかったらしい。人の気持ちを気にしすぎだと思います。
課長のあなたには、一般のお客様に対して売る時もおまけや値引きすることも多いということも耳に入って来ます。電話も世間話が多く長くなりがちです。
自分のミスを誰かに指摘されると非常に狼狽します。すぐ涙を流すので上司としては注意するときに気をつかいます。
仲の良い人には気に入らないことがあると時々泣きながら怒る場合もあるようです。その際は普段は優しくソフトなのに人が変わったように怒ると言われています。時々同僚ともぶつかるようです。ぶつかると言うより正確には急に泣き出したり怒り出すと言ったほうが良い。感情をぶつけられた側はよく分からず困惑するようです。しばらく口も利かなくなることもあるようです。感情の起伏が激しいのでやや扱いが難しいと周囲の人は思っています。
「落ち込みやすい」タイプの部下の特徴
人を喜ばすのが大好きですが、少しオーバーなので著者は「喜ばせよ演技型」とも呼んでいます。
短所
◇深く物事を考えない。ちょっとした事に泣いたり怒ったりする、過剰反応。
◇対立や葛藤の調整は苦手。
◇過剰反応をしがち。批判されると非常に狼狽する
◇自分が感じた事が現実だと誤って認識する。
◇他の人の反応を心配しすぎる。
◇仕事の目的よりも他者に受け入れられることが重要に感じている。
◇他の人との距離の取り方と制限を設ける事が困難。
長所
◇明るく社交的。周囲が楽しくなる。
◇感情が表現できる、熱心
◇人生のチアリーダー。他者の行動を応援するのが好き。
◇他の人を幸せにするのが大好き、サービス精神旺盛。
◇公共の場でうまく役割を果たす。
◇物事を楽しくする。
◇他の人が自分の感情に気づく手助けが出来る。
◇職業;俳優、歌手、接客業、営業・販売、広報・宣伝担当
「落ち込みやすい」タイプの部下との接し方
接し方
①ゆっくりと気持ちを聞く、共感する。
②質問し考えを聞く。自分が感じたことを事実と間違えるので、現実に起きていることを冷静に共有する。
③仕事の意味をともに考える。良いと思った点は褒める。特に思考に関することははっきりと承認する。
*交流分析で言うと一種の心理ゲーム(私を構って欲しい)なので、暖かく包み込むように関心を示す。間違っても行動を否定してはいけない。
ほめ方
①気配りした仕事ぶりを評価する「気配りされた仕事だったね、よかったよ」
②思考を使った仕事に焦点をあてる「よく考えて工夫したね」
やってはいけないタブー
①このタイプの他者へのきめ細やかな気遣い、行動を軽視しない。自分では人を喜ばせるために最善の行動を考えているのだから、行動を批判するのはもってのほか。
②叱る時は「君ともあろう人が」と長所に配慮しながら不足点を伝える。
育成のポイント
①人に嫌なことを言わねばならない時は、感情ではなく冷静に話すよう指導する。なぜそれはいけないのかを事実データで落ち着いて話すよう教える。
②深く考える。目的と手段を論理的に考える。考える力はあるので励ます。細かくレポートを見てあげて支援するのも良い。
このタイプは、幼児期に親や周囲を喜ばせることを期待されてきた。可愛いしぐさや言動は親を喜ばせた。大人になっても人を喜ばせることを重要なことと感じている。
「落ち込みやすい」タイプの部下対応の成功事例
課長のあなたが明田さんと会話をしている場面をご紹介します。
この前、提携先のオーナーの件でずいぶん落ち込んでいたみたいだったね
そうなんですよ。聞いてくれます?実はあのオーナーさんにあれだけ一生懸命説明したのに反応がないんです。笑ってくれないし、うなづきもしてくれない。あれだけ反応のないお客様は初めて・・
なるほどそれは大変だったね。
そうなんですよ。普通一生懸命説明されたらうなずくし質問や感想も言うじゃないですか。私、一生懸命やりました!だけど今回は全然反応がなかったので何か私が悪いことをしているのか、嫌われているのかなって思って泣けてきました(うっすらと涙を浮かべる)。もう私って・・・・(ため息をつき、涙を流す)
なるほど。そうだったんだ。そこが悲しかったんだね。いろいろ率直に話してくれてありがとう
こちらこそ、お話を聞いていただきありがとうございます(涙を流す)
いろいろお話をしてくれたね。ありがとう。さて、話してみて今どんな感じかな
そうですね、うーん、冷静になると少し考えすぎ、思いすごしが強かったかなあ、と思います。
ほう、もう少し詳しく言うとどういうことかな?
後でお聞きしたのですが、オーナーさん、我が社との契約を継続してくださったんですって
うん、そうだよ。皆、努力したし、商談で君の貢献も大きかったと思うよ
そうなんですよね。必ずしも私は嫌われたわけでもないし、オーナーさんもわかってくださったんですね
そうだよ。君は任務を立派に果たしたよ。外国のお客様の中には文化も対人関係のあり方も日本とは違うので感情を余り外に出さない方もいらっしゃる。だから気にすることはないよ。
そうなんですね、安心しました。これからはあまり相手の反応に一喜一憂しないようにします。気持ちを表に出さなくても感謝してくださっている方もいるんですね。
おやおや、私がアドバイスしようと思ったことを先に言われちゃったな。さすが君は洞察が深いよ
まとめ
「感情に流される」タイプの部下には
(1)気持ちを尊重し、遮らずに傾聴する。「そんな気持ちなんだね」と受け止める。
(2)気持ちを聴いてもらって落ち着いて来たら、考えを訊く。
(3)どう問題解決するか、ともに考える。元々持っている考える力を開花させるよう、支援する。
このタイプの部下には以上で接すれば、このタイプの部下はモチベーションが上がり前向きに持ち前の良さを発揮してくれるでしょう。
さて、上司にとって「苦手で嫌いな部下シリーズ」、下記にてアップしていますので合わせてご覧いただくと部下とのお付き合い(指導育成)にお役に立つと思われます。
今回の部下(落ち込みやすい)は感情的になる部下ですが、他に感情的になる部下はいます。
ささいなことですぐ怒る部下は
>「やたら細かい質問が多い」部下 苦手で嫌いなタイプのb羽化対応その1
コメント
COMMENT