クライアント企業さんから社員の離職を防ぐにはどうしたらよいかの相談が増えてきています。かつて筆者が中央アジアのウズベキスタンノビジネススクールで教えていた時も経営者の関心事の上位は離職防止でした。ひどいところは年初めに採用した人の大半が年末にやめてしまうのことでした。
日本ではそこまでは極端ではないにしても、最近は大卒新人社員の3割が入社1~3年以内に離職すると言うことがあります。
社員に離職されると数百万円かけた採用費が無駄になる経済的損失、人員に穴が開く、全体の士気に悪影響があるなど会社にとって被害が大きいですね。
今回のブログでは「社員の離職をどう防ぐか」についてご紹介したいと思います。
悩める経営者、人事担当、管理職の方に役立つ情報になるかと思います。
離職する理由
社員が離職する理由は、マイナビ、リクルート社の「転職・離職理由」や内閣府「若者意識調査」によると下記があげられます。
1.労働環境が悪い
残業が多い、休日出勤が多い。友人や家族と予定をしていても仕事が入ってきてしまう。定時後にやりたいこと(遊び・スポーツ、学び、デートなど交友)が出来ない。心身ともストレスがたまる。仕事がいわゆる3K(危険、きつい、汚い、さらにカッコ悪い)職場である。
2.やりたい仕事ができない
思った仕事とは違うことをやらされる。例えば、技術職なのにサービス業や営業をやらされる。就職活動がうまくいかなくてやむなく入った会社だけど、元々対人関係は苦手で与えられたサービス業の仕事が自分に合っているとは思わない。与えられた仕事を我慢して続けようとも思うが、自分の将来のキャリアに役立たないと感じる。
3.人間関係が悪い
社内でパワハラ、モラハラ、セクハラが横行している。仕事の説明が丁寧ではない。職場が暗い。あまり会話・雑談をしない。上司が厳しくて怒られてばかりいる。先輩は毎日残業している。数年先にああいう風になりたいと思わない。そんな本音を話せる人、相談できる人がいない。
4.会社の将来に希望が持てない
この会社どうなるんだろうと不安がある。会社がどこに行こうとしているのかの方向性がわからない。会社の方向性や価値観に共感できない。
5.給料が安い
採用面談の時に給料の話はしているはずだが、入社してそうではないことが分かった。労働負荷が大きい割にこの給料では割に合わない。
離職防止の対応策
離職する理由の1番の「労働環境が悪い」、5の「給料が安い」は経営者、人事担当が頑張って改善するしかないですね。ただすぐには改善が難しいので、経営者が「今は無理でも数年先は良くしていく」と熱く伝えることが大事です。
その代わり、社員がこの会社に在職し続けることのメリットを感じてもらうことが重要です。
そのためには
1.日常コミュニケーションを良くし、何でも話し合える関係を作ること
労働環境が良くて給料がいいのは理想的ですが、なかなかそうはいかない現実がありますね。そういう悪条件の下でも離職しなくてずっと在職する人がいます。そういう方々がいるのは下記の要素があります。
(1)日常、気軽に会話できる、オープンな雰囲気。若い人から不安なことを言いだしにくいので先輩や上司が様子を見て「どうだ調子は」と声がけする事が必要ですね。
(2)困った時に困ったと言える。同僚や上司が助けてくれる。不満がある時に不満だと言える。周りの人がその不満を聴いてくれる。
(3)同僚・上司から存在を認められていて「ここにいて良い=居場所」を感じられる。
(4)上司先輩から関心を持たれていて声がけをされる。
上司から褒めてもらうだけでなく、一緒に仕事をして日常の行動を良く知っている職場の仲間から「この点良かった」「ありがとう」などのフィードバックや感謝のコメントは意欲が上がります。
2.やりたい仕事、身につけたいキャリアを話し合うこと
(1)やりたい仕事ができている
「これは自分の天職だ」と言う仕事に就いた社員は幸せですね。特にそれが人の役に立っている、日々成長している実感があり先々に希望が持てる状態になると労働条件、給料にたとえ不満があっても長続きします。
ただ最初からそうなるわけではありません。そうなるためには、次のことが必要です。
(2)上司と「どんな仕事をしたいか、数年先どうなりたいか、どういうキャリアを積みたいか」について面談があり、その実現に会社がサポートしてくれる。
若い社員も実は自分が何をしたいのかはっきりしていない場合もあるので、その場合は今の仕事について確実に仕事を覚えスキルが上がっていく実感を持ってもらうことが大事ですね。
(3)上司・先輩が教育熱心でどうスキルアップするかを考えてくれる。自分もチャレンジしたいことを公言できる。アドバイスや行動後の成長についてフィードバックがあるので、頑張れば成長できる実感がある。
3.会社の目指す方向を絶えず伝える、自分が必要とされていることを伝える
日々仕事をしているだけでは、「これでいいんだろうか」という気になります。会社全体のことを知り視野を広げることが必要です。
(1)経営者が会社の環境や現状を伝え、今後目指す方向(市場、商品など)を熱く語る。
(2)これは経営者だけでなく、管理職や先輩社員も「こんな職場にしよう」「こんなスキルを見つけよう」と自分の言葉で熱く語ることが必要です。
(3)その中で、自分が重要な役割を果たしていることが説明されていて確かにそうだと実感していること。
ベースは何でも話し合える人間関係
何でも話し合える人間関係がないとどうなるでしょうか?
特に1番の職場の人間関係が悪いと意欲が下がります。暴言を吐かれるのは論外ですが、積み重なると離職に繋がります。
例えば
(1)無視される、軽く扱われる
人を人として大事にされないと言うことですね。
・仕事の指示をするときに顔を見ない、名前を呼ばない(上司がパソコンを見ている)
・会話しない、声がけしない
・部下が質問や相談をしてきてぞんざいに扱い丁寧に答えない、
・必要な情報を与えない。
これらはわかりやすい心理が鵜と言われるTA(Transactional Analisys:交流分析)ではディスカウントと言われています。値引きのことですね。スーパーマーケットの大売り出しのチラシでは100円の品が30%引きで売られていたりしますが、同様に相手や状況の価値を値引きする言動のことを言います。
職場を含む日常生活ではこのディスカウントをされると意欲が下がります。やってはいけない行為です。
これは下記のチェックシートをやってみて自分の言動を確認してみてください。
>部下の意欲を下げる言動チェックシート
(2)仕事を遂行しても褒められない
褒められないと「この職場にいても、役に立てている感じがしない」と離職につながります。
褒め方は下記ブログをご参考にしてください。
>部下を褒めるのが苦手な上司はこれをやろう!
(3)職場が暗い、沈滞したムード
職場の中で会話が少ない。プライベートの雑談もない。先輩も嫌々仕事をしているように見える。上司も笑顔がなくいつも疲れた顔、ピリピリした雰囲気がある。
(4)暴言を吐かれる
本来はこれがワースト1位です。近年パワハラについて各社教育はしていると思いますが、これを言われると即アウトです。ディスカウントの中の大きな値引きに当たり言われた方は傷つきます。
まとめ
社員の離職に頭を悩ませる会社が増えてきていますが、その対応を考えましょう。
1.離職の理由は
(1)労働環境が悪い(残業、休出が多い)
(2)やりたい仕事が出来ない(キャリアが積めない)
(3)人間関係が悪い
(4)会社の将来に希望が持てない
(5)給料が安い
2.「労働環境が悪い」、「給料が安い」は経営者が頑張って改善して必要がありますが、そのマイナスを補うメリットが必要です。社員が会社に居続けるメリットは
(1)何でも話し合える関係になっている
(2)やりたい仕事についている。または、将来の自分のキャリアについて上司と話し合い、実現に協力してもらっている。
(3)会社の明るい未来が話され、自分が重要な役割を担っていることが実感としてわかっている
3.社員が「大切に扱われていない」「ここにいても自分の将来は明るくない」と感じるのが離職の最大の原因です。
これらを経営者・管理職が意識して改善策を実践していると部下の意欲が上がり離職も減っていくでしょう。
社員の意欲を上げ、明るい職場の雰囲気を作るには下記のセミナ―がおススメです。
>部下がはつらつと動くようになるTAによる育成力強化研修
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