心身症予備軍の部下の対処法はこれだ!!

会社や学校、家族でメンタルの病気になる方が増えてきています。また近年、心の病がもとで休職したり、退社する従業員が増えてきています。
皆さんの部下はみんな健康ですか?
管理職として部下がメンタルが原因で体調不良になった場合はどうしたら良いでしょうか?

先般、心療内科医の花岡啓子先生の講演を聴く機会がありました。
花岡先生は花吉祥寺通り花岡クリニック心療内科医、PSRストレス医学研究所所長であり。交流分析学会ではベテランの講師であります。交流分析はじめ心理療法を実践に結び付けている専門家ですが、心と体に起こる出来事をわかりやすく伝えてくださいます。
今回は心と体にお困りごとを抱えるじれについて、花岡先生の説かれるエッセンスと応用例をご紹介いたします。

心身症の事例

花岡先生の専門である心療内科は心身症を扱う内科です。心身症は身体疾患で、その原因が心理・社会的な原因が密接に関与しているものを言うそうです。心身症の身近な例を花岡先生は紹介してくださいました。

「例
期待の新人Aさんは仕事の締め切りに追われて頭痛がひどくなっています。
人づきあいの良い保守サービスマンのBさんは同僚とのお付き合いがもとで胃痛に悩まされています。
営業成績抜群のCさんは取引先との難しい交渉がきっかけで不整脈を訴えています」

花岡先生によると、心療内科医相手の思考、感情、行動について質問し気づくように会話していきます。

例えば、期待の新人Aさんは仕事の締め切りに追われていて、思考は「チェックチェック、まだ足りない」、感情は「出来ない自分はダメだめ、罪悪感」、行動は「毎日遅くまで残業」これでは頭痛がひどくなりますね。

人づきあいの良い保守サービスマンのBさんは同僚とのお付き合いがもとになっています。自分は本来はお休みなのに同僚に頼まれて休日出勤を続けます。思考は「いい人でいなければいけない」、感情は「イライラ」だけど、行動は「笑顔で接し、気持ちを押し殺す」なので、胃痛に悩まされます

営業成績抜群のCさんは取引先との難しい交渉がきっかけですが、思考は「思い通りに進めてみせる。営業成績を上げるぞ」です。感情は「負けてたまるかの闘争心」、行動は「相手を、脅したり、すかしたりで自分の思い通りに操作する」で一刻も休みません。
確かにこういう心理状態だと、不整脈になりますね。

頭ではまだまだやれると思っても体や感情の声は悲鳴を上げているんですね。

そこで花岡先生によると、心療内科医は「体の声を聴く」というアプローチをするそうです。「体は何と言っていますか?」「気持ちはどうですか?」と尋ねます。

するとAさんからは「できなかったらつらい。いたたまれない」と返事が返ってきます。

Bさんからは「同僚や上司に喜んでもらえないとつらい。でも休日にずっと仕事をやっていると身体はしんどいし、疲れてイライラする。同僚にノーと言えない自分にもイライラ」

Cさんからは「負けたら終わりだ。思った通りに進まないイライラ。身体は・・・疲れている。できれば少し休みたいがそんなことをしたら遅れていしまう。またイライラ」

ストレスがおなかに詰まる

部下の様子を関心もってよく観察しよう

心身症そのものになった場合はお医者さんに行くことが必要ですが、その前に職場の管理職としてやれることはないでしょうか?
職場の管理職は医者ではありませんが、部下の感情や体調を聴くことができます。

それ以前にまずは部下のふだんの様子に関心を持ちよく観察しましょう。ミスが多い、ふさぎこんでいる、ぼーとしている事が増えたなど、部下の顔色や行動を見て異常に気がつくができます。

そして声がけします。例えば「顔色が悪いけど体調はどう?」「顔が苦しそうだけど、どう?」「毎朝早いし、夜も遅いし大丈夫か?自分や周りでサポートすることはない?」と尋ねます。

質問した後は部下の話を傾聴。途中でさえぎることなく、最後まで部下の話を聴きます。相手の顔を見てうなづき相槌を打ち相手の話に「そういう気持ちなんだ」と受け止めます。

多くの場合、部下は最初上司に正直なことは言わないですね。それでも構わないからよく観察して声がけするようにします。二人だけの部屋で状況や気持ちをじっくり受け止めます。アドバイスは最後までしません。

リモート会議が増えたり、オンラインで業務指示をしたり報告を受けたりしている時は、余計顔色を見る必要があります。

管理職として、仕事の進捗は気になるところですが、それ以前に部下の心身の健康が最優先という意識を強く待ちましょう。普段から部下に声がけして、何でも相談できる関係を作っていることが前提となります。

部下が管理職のあなたに気持ちを伝えることができれば、それだけで部下は楽な気持ちになります。
部下が今の苦しい気持ちを伝えることで幾分か楽になります。

ストレスの対応法

花岡先生によると「心身症の原因は様々なストレスですが、同じストレスを受けても人によってうまく受け流す人もいれば深刻に受け止め動けなくなってしまう人がいます。その受け止め方(生きざま)でその人の処し方は変わってきます。ストレスに対しその人特有の心の在り方があるので、継続的に楽になる方法を教える必要があります」とのことでした。

花岡先生の患者の心の見立や指導法からヒントをもらいましょう。それは管理職も応用することができます。

花岡先生はわかりすい心理学のTA(交流分析)理論を元に心の仕組みや成り立ちを考えます。
TAとはカナダ生まれの米国の精神分析エリック・バーン博士が創始したわかりやすい心理学です。これを学べば自分の心の状態を知ることができ、健全な対人関係、前向きな生き方を選ぶことができます。心理療法の世界だけでなく、学校教育、企業の社員教育などにも広く王応用されています。

企業の教育への応用については下記をご参照ください。
TAによる部下育成研修

TA理論の中で、ドライバーという考え方があります。ドライバーとは馬車の御者という意味で、我々が無意識に駆り立てられるような行動を言います。
ドライバーは「完全であれ」「努力せよ」「喜ばせよ」「強くあれ」「急げ」の5種類あります。多くは幼少時に親から言われたメッセージがもとになっています。下記の表をご覧ください。

5つのドライバー 良い点 問題となる点
完全であれ(Be perfect) ・正確に仕事をする。
・より良い仕事をするする
・責任感・向上心が強い
・自他のミスを許せない
・石橋をたたいて渡る
・いつもイライラし落ち込む
努力せよ (Try hrad) ・勤勉で良く働く
・向上心が強い
・物事を楽しまない
・休まない、一日中働く
・歯切れが悪い、やり遂げない
喜ばせよ (Please others) ・他者の面倒を見る
・明るくよく笑う
・周りを楽しくさせる
・自分のことは後まわし
・頼まれると No を言わない
・身内に厳しい、外面が良い
強くあれ (Be strong) ・我慢強い
・黙々と働く
・泣き言を言わない
・喜怒哀楽など感情表現しない
・弱みを見せずに一人抱え込む
・共感しにくい、甘えない
・普通の人が頼りなく見える
急げ   (Hurry up) ・仕事はすぐ取り掛かる
・納期前に仕上げる
・テキパキしている
・せっかち、待てない。
・ゆっくりの人に対しイライラ
・人生を楽しめない(食べるのが早い、味わわない)

Aさんの場合は「完全であれ」「努力せよ」「急げ」でしょうか。
Bさんは「喜ばせよ」「努力せよ」、Cさんは「完全主義」「強くあれ」「急げ」でしょうか。

ドライバーは適度だと仕事をや社会生活を送る上でプラスに働きますが、いつもいつも過剰に働くと心身ともつらい状態になりますね。
怒りとストレス

アロワー(許可)を伝えて気持ちを楽にしてもらう

その駆り立てられる心理状況であるドライバーが分かったところでそれを楽にする言葉を伝えます。
TAではその楽にできる言葉をアロワー(許可)と言います。極端な行動をする部下にはアロワーを言って楽にすることができます。アロワーの例は下記の通りです。

5つのドライバー アロワー(許可)の言葉
完全であれ(Be perfect) ・「70%~80%でよい」「完全でなくていい」
・「あなた自身であってよい」「ありのままでよい」
・「トライして、様子を見て仕上げていけばよい」
努力せよ (Try hard) ・「すぐやり遂げてよい」「それをやってよいよ」
・「自由であってよい」 「楽しんでよい」
・「楽をしてよい」「いつもいつも頑張らなくていい」
喜ばせよ (Please others) ・「気持ち・感情を表わしていいよ」
・「弱みを見せてよい」「弱音を吐いてよい」
・「甘えてよい」   「嫌なら嫌と言っていいよ
強くあれ (Be strong) ・「自分優先でいいですよ」「自分を大事にしてよい」
・「自分の欲求を出してよい」「No と言ってよい」
・「身内を大切にしてよい」
急げ   (Hurry up) ・「時間をかけてよい」「ゆっくりしていい」
・「のんびりしてよい」
・「人生を楽しんでいいですよ」

ドライバーが「完全であれ」ならアロワーは「そのままで十分」、「他人を喜ばせよ」のドライバーなら「自分を喜ばせて良い」、「急げ」なら「時間をかけて良い」など。

心療内科医はあまり患者には心の仕組みについて伝えないそうです。自分で気づくほうが効果があるからです。
「あなたの性格はこうですね」と診断を伝えると「私の何が分かるんですか」という反発があるからだそうです。

管理職も部下にアドバイスというよりも、「こういう考えもあるけど、自分に言ってみたらたらどうかな?」と優しく伝えます。伝えた後、部下がその言葉を味わう時間をともに寄り添って過ごしたらいかがでしょうか?
寄り添う

まとめ

部下のメンタルの健康不全を防ぐために、心療内科医の見立てやアプローチ方法を管理職も学びましょう。

1.まず管理職が日常部下の顔色、表情、態度などを見て不調に気づくこと。

2.部下に不調な状態にありそうなら「どうしたんだ、体調悪いのか」と尋ねる。

3.部下が管理職のあなたに気持ちを伝えるまで傾聴する。これができれば部下は楽な気持ちになります。
それには部下が率直に心身の異常を訴えることができるような関係を作っておくことが必要。

4.自分を駆り立てるもの=ドライバーを判定する。

5.ドライバーの気持ちを和らげる=アロワーの言葉を伝える。

これらを管理職が部下に伝えていると、部下は心身の調子を悪くすることはないですね。

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藤原勝

藤原勝

【経営理念を浸透させることで主体性を引き出すプロデュ―サー】

ビジョンカムトゥルー株式会社 代表取締役。国内外1500人のリーダー元気に課題遂行や部下マネジメント強化の研修を行ってきた。
日本ゲシュタルト療法学会公認トレーナー。TA研究部会運営委員長。剣道教士七段。三重県生まれ、大阪育ち。
お客様の現場に入り問題解決し、「どうしてうちの会社の事がそんなにわかるのか」と言われる。経営者の経営理念を基に管理職が中期ビジョンを描き、本気の部下たちを率い実践することで国内外の企業を元気にしたいと想い東奔西走中。

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