初めてチームを持つマネージャーにとっては部下の育成って難しいですよね。特にやる気もない、仕事もできない部下を持ったら扱いに困りますね。そういう部下を持ったマネージャーにとって前回はモデル対比法をご紹介しました。
>「仕事が出来ない部下」の指導方法~行動目標設定編~
今回はその続編になります。
なかなか成果が上がらなくて意欲のなかった部下の山田君はその後真面目にやっているようですが、もう一つ営業の成果に結びつかないようです。
その後、鈴木マネージャーは面接を数回やり、いろいろ工夫した結果、山田君のレベルアップに成功しました。今回は前回のステップアップ編としてこのタイプの部下との育て方をご紹介します。上司として部下の指導育成の応用がわかり、部下が育つので上司としても自信がついますよ。
「出来ない部下」を持つ営業マネージャー 2週間後の面談1
鈴木マネージャーは山田君と前回モデル対比法で話合いをした結果、山田君はやることが明確になりました。2週間後の面談ではその後どう行動しているかを聞きました。山田君は実直にやっています。
週間顧客訪問スケジュール表、訪問記録は書いているようです。商品パンフレットも覚え、基本的な説明はできるようになりました。
では何が足りないのでしょうか?
<1か月後のロールプレー1>
鈴木マネージャーの会社では新製品の発表があり、社内でその説明会がありました。その後、営業会議でその新製品をどうお客様に説明するかの話合いがありました。そこで出た意見は、古典的な営業スキルアップの方法ですが、お客様役と営業役に別れて別れて商談のロールプレ―を行おうと言うことになりました。
営業経験が長い方は経験している基本トレーニングですが、この数年内に営業部署に来られた方はやっていません。さっそくやってみました。
ベテラン営業の田中さんはさすが見事です。お客様役からどんな質問をされても上手く答えます。まるで商談の現場が再現されているようです。こんな頼りになる営業マンなら買ってみようと言う気になりますね。
山田君にもやってもらいました。そして彼の特徴が分かりました。事前に勉強したので、5分程度の基本的な商品説明は出来ますが、お客様役のひねった質問に答えられなくて固まってしまいます。
一方で営業実績がいつもトップのベテラン営業の田中さんはお客様役がふざけた質問をすると「ハハハ、何、おっしゃっているんですか(笑)」と笑顔で上手くかわします。同じ場面では、生真面目な山田君は答えられません。
鈴木マネジャーはその応答例をビデオに撮って山田君に渡して、年齢の近い営業の小川さんとともに田中さんのやり方を研究したらどうかと言いました。一種のモデル対比法ですね。山田君は素直に頷いていました。
新製品を購入後、満足しておられるお客様の声を聴く
新製品の発売があって1か月、鈴木マネージャーのグループではいくつか売れました。田中さんはあいかわらず一番売っています。
では実際にお客様はどういうところに魅力を感じてその製品を購入していただいたのでしょうか。またお使いになっての感想はどうかの声を聴こうと言うことになりました。その調査を山田君と小川さんにやってもらいます。実際に、新製品を購入していただいたお客様の声を聞きました。それをレポートにまとめて課員に配りました。
その2週間後に又ロールプレー研修をやるとアナウンスし、山田君に売れるパターンを覚えるように言いました。
<ロールプレーその2>
2回目のロールプレー実習をまたやりました。驚くことに今度は山田君は見事に対応出来るようになりました。お客様役がひねった質問を山田君にしても「お客様、何、おっしゃっているんですか(笑)」と笑顔で上手くかわします。まるでベテラン営業の田中さんがそこにいるようです。山田君は田中さんのお客様との応対のコツをしっかり学んだようです。
またお客様役から「この製品、実際に使ってみてどうなの?便利なの?」という質問に対しても、落ち着いて、資料を見せながら「この実績をごらんください。この製品をご購入されたお客様は○○の点でご満足いただいています」と答えます。見事です。
回りの同僚は「やったな」「いつ、そんなに営業トークがうまくなったんだ」「落ち着いてiいて、この道20年のベテラン営業みたいだぞ」とほめます。本人も嬉しそうです。
興味のあることをことをとことんやると得意技になる
なぜ山田君はレベルアップしたのでしょうか?実はこれは鈴木マネージャーが幼児教育に関心を持っていて、それをヒントにアドバイスしました。
将棋の藤井聡太さんが受けた教育であり、海外では、ピータードラッカー始め、Amazon創始者のジェフ・ベゾス、Google創始者のラリー・ページなどがやっていたと言われる、モンテッソーリ教育です。
モンテッソーリ教育では下記を大事にします。
出典:0~3歳までの実践版 モンテッソーリ教育で才能をぐんぐん伸ばす!(藤崎 達宏著、三笠書房)
1.安心安全・安全な場を作り、基本行動を身に着けるまで親はサポートする
2.子ども自身が興味関心を持つ対象を見つける
3.子ども自身が興味あることを繰り返し集中して行う⇒満足感・達成感がある、他の事にも関心を持ち自発的に動く
つまり子供は関心があることはどんどん自発的に行動する。それを親は止めてはいけないということです。例えば、ハイハイしだした幼児が、ティッシュの箱を見つけるとどんどんティッシュを引っ張って抜いていき空にします。幼児はそれが面白いのです。親はそれを見て止めるのはなく、おもちゃのティッシュを与えて心行くまでやらせると良いと言うことです。
これは成人の学習について同じだと鈴木マネージャーは思いました。友人がコマツに勤めていますが、技術者がブルドーザーの操作を覚えるには、最初は基礎トレーニングを受け、あとは人のいない広い川原で自由に操作するそうです。どういう操作をするとブルドーザーが動くか、どういう操作をすると壊れるか、体験で学ぶそうです
山田君にも適用しました。製品の説明を一つのワンパターンでは出来るようになった山田君ですが、それだけでは限界があるのであと2パターン、先輩たちのやり方から学びそれを身に着けるように練習してもらいました。
山田君はやっているうちに楽しくなりました。
まずは説明の基本パターンを繰り返し繰り返し声に出して練習し5分で出来るようになりました。自信がつきます。
そして次は主に質問別に3パターン準備して、年の近い同僚 小川さんに質問してもらいます。そして繰り返し繰り返し質疑応答の練習をしました。質問に対してすぐ回答できるよう時間を測りました。クイズみたいな面白さがあります。慣れて来ると、それらのパターンをミックスしてお客様をイメージして商談練習をしました。お客様役の小川さんも余裕が出てきて真面目なお客様役、しつこいお客様役、など演じます。
お互い楽しみながら、質疑の練習を続得ていました。
それが結果としてうまいロールプレーに繋がったようです。2回目のロールプレーでは上手に質問に回答し周りの人が驚きました。鈴木マネージャー始め、まわりの先輩はそれを褒めました。この褒めること(コーチングでは承認と言います)で山田君は自信がさらにつきます。新製品の説明と質疑応答は自分の得意技になったようです。
おかげで山田君の実際の営業では少しずつ売れるようになりました。新しいお客様を訪問するのが楽しみになったそうです
次の展示会では本部より指名があって説明員に駆り出されました。説明のうまい営業として本部にも認知されたのでしょう。鈴木マネージャーが展示会に見に行きましたが、山田君はつらつと自信をもって説明していました。展示会に来て初めてその新製品を見た、色々なお客様の質問や要望を聞いて上手に対応していました。誠実で自信あふれる笑顔が輝いて見えました。
まとめ
1.基本はちゃんと覚えてもらう。
2.よく売れる人、実績のある人の動作を真似る。
3.商品を買ってくださったお客様の声を良く聞きまとめる。
4.以上のことをまとめ、自分で何回となく繰り返して練習する。商談の実際を想定してやっていると楽しくやる。同僚とペアになってゲーム感覚でやると良い。
5.うまく出来たら褒める。知らない間に得意なこと(得意技)になっている。
このタイプの部下は得意な事を見つけて自信を持てば、自発的に次の目標を見つけはどんどんのびていくでしょう。マネージャーとしても部下が伸びて育っていくのを見るのはうれしいですね。
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