指示した仕事はコツコツやるけれど、それしかやらない、自発的な行動をしない部下を持つと上司はちょっと大変ですね。会議では黙っているし、仕事の改善提案をしてくれと言ってもして来ない。
今回はこの無口で引っ込み思案タイプの部下の接し方をご紹介します。このタイプの部下が積極的になると職場の雰囲気も変わります。あなたもストレスが減りますよ。
(イラストは鈴木景子氏の作品)
「無口で引っ込み思案」タイプの部下のお困りの事例
木田健人(34歳)さんは製造部品質保証課でお仕事をされています。無口で目立たない存在ですが、まじめでコツコツ仕事をされ専門知識・判断力はあるので信頼しています。また親切で他人が困っていたら、自分の仕事を一時止めても、お手伝いをします。
ただ言われたこと以外やりません。会議では2時間も黙っていることがあります。議事録作成をお願いしたら、きちんと書いてくるのでポイント把握力がありしっかり参加はしているようですが、反応が無さ過ぎて存在感が薄いのです。
責任感はあるのですが、上司としてはもう一歩先の仕事をしてもらいたいのです。自ら改善提案をするとか、もっと勉強したいとかの意欲的な発言が欲しいのです。試しに今後の品証課の在り方についてまとめるようにお願いしましたが、〆切になってもやって来ません。ちょっとハードルが高かったかなと方針を変えることにしました。
改善以外にもっと外へ出てもらいたい要望があります。営業と同行して市場クレーム先に行って欲しいのですが、お客様と会話ができるかが心配でまだ市場には出していません。お客様が当社製品につきどんな使い方をしているかの市場情報をつかんでもらいたいのですが、まだ早いかな。まずは世の中の変化に気づいて欲しいと思い、展示会に行ってレポートを書くようお願いしました。
年齢から言うとそろそろグループリーダー(責任者)にしたいのですが、どうしたものか迷うところです。グループリーダーにして部下を持たせたいのですが、先般の業務目標期首の個人面談の際、「来期はグループリーダーをやってほしい」と伝えたら黙ってしまいました。3か月経って中間面談でまたその話をすると「とんでもない」と言って断られます。個人として仕事での信頼性はあるし、その気になれば責任を持って他の人をまとめる力はあると思います。上司として部下の力を伸ばしてあげられなくて悩ましく歯がゆい思いです。
「無口で引っ込み思案」なタイプの部下の特徴
【短所】
◇引っ込み思案。無口で何を考えているかわからない。特にストレスに直面すると引きこもる。または逃げてしまう。
◇空想に捉われる。自分はだめだと想像する。自信不足。
◇色々考えるが、行動しない。ありのままの自分ではだめだと自己肯定感が低い。何かすると失敗するという幻想がある。
◇他人の欲求は支持するが、自分の欲求は無視し、他者に要求しない。反対にあまり親切に関わられると相手に悪いと思ったり嫌われるのが怖くなって距離を置きたくなる。
◇報告が少ない。周囲の人はこの人にもっと情報を出して欲しいと思っている。
【長所】
◇優しく、親切、協調的、支持的他者サポートが得意。
◇一人で良く働く。決まったこと、慣れた仕事は陰ひなたなくきちんと責任もってやってくれる。
◇想像力豊か。ロマンチスト、人生の根本問題を考える。
◇自然や音楽・絵画・文学などの芸術が好きで、芸術的美的センスがある。
「無口で引っ込み思案」なタイプの部下との接し方
接し方
①発言すること、行動することをゆっくり出すよう明確に優しく期待を伝える。時間はかかるが、徐々に出て来る。その行動を受け止め、励ますこと。
②自分の能力を値引きしがちなので、事実で冷静にこの方の能力を伝える。
③急に高い目標を伝えると引っ込んでしまうので、徐々にトライしてもらう。トライ可能な目標にどうやって取り組むかをともにに考える。小さい成功体験を持ってもらう。
ほめ方
①行動をほめる。「いつもコツコツやってくれてありがとう。助かるよ」
②芸術的センスをほめる。「そのアイデア、面白いよ」「センスあるねえ」
叱り方
①指示に忠実なので、あまり叱る必要はない。
②冷静に期待すること、期待しない行為のみを伝えると考えて行動してくれる。
やってはいけないタブー
①行動を責めてはだめ。
②「どんな気持ち?」と感情は問わない。このタイプは自分の気持ちを感じないように生きてきたので、感情を聞かれると混乱する。
③あまり深く関わりすぎない。支配されすぎと感じると引っ込んでしまうか逃げ出してしまう
ファミリーヒストリー
幼時から親は他の事(仕事や他の兄弟の世話)に忙しくてあまり関心を持たれたなかった。想像の中で自分の面倒を見てくれる理想の親をイメージして自分を慰めて来た。一人コツコツ遊ぶのが好き。自分の欲求を出さずに、いい子にしていると親は関心を持ってくれると思っていた。
「無口で引っ込み思案」タイプの部下対応の成功事例
課長のあなたが木田さんと会話をしている場面をご紹介します。
課長は木田君の良い点を具体的に事実でほめる。木田君は自信がないのでなかなか信じない。
自信のない木田君に対して、色遣いの良さや臨場感のあるレポートが良いと具体的にほめます。自分が言っているだけではなく、隣の職場の課長もほめていると客観的なデータでほめています。木田君もだんだん受け入れるようになってきました。
自分のレポートが周囲に受け入れらると安心した木田君に対して、課長は今度は違う要望・期待を明確に伝えます。引っ込み思案のこのタイプには「外に出てきてほしい」とはっきり期待を伝えるのが大事です。
新しいことに挑戦するのが苦手な木田君にサポートする事を伝えます。引っ込み思案だけど、未知の事には好奇心がある木田君にお客様をまわる営業の世界の素晴らしさをアピールしています。阻止てやるべき事、やれることをしっかり伝えています。
この面談で一番伝えたいのがリーダーになってもらうことを課長ははっきり伝えます。木田君にとってハードルが高いことはわかっていると伝えます。いきなり、今ここの感情を質問するのではなく以前の状態を聞かれているので、木田君も答えやすいのです。
まとめ
「無口で引っ込み思案」タイプの部下には
(1)行動することの期待を明確に伝える。時間はかかるが、徐々に出て来る。その行動を受け止め、励ますこと。
(2)急に高い目標を伝えると引っ込んでしまうので、徐々にトライしてもらう。トライ可能な目標にどうやって取り組むかともにに考える。
(3)自分の能力を値引きしがちなので、芸術的センスなど強味を事実で冷静に確認する。そして小さい成功体験を持ってもらう。
このタイプの部下には以上で接すれば、モチベーションが上がり少しずつチャレンジするようになり、持ち前の実力を発揮してくれるでしょう。
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