パワハラにならない叱り方その8 これは パワハラになりません

前号では「パワハラのグレーゾーン」をご紹介しました。実際こういう場合はどうなんだろうとまだ迷って部下を叱れないマネジャーが多いかと思います。
そんな中ちょうど各種新聞で次のような報道がありました。厚生労働省は職場のパワハラを防止するため具体例や指針案をまとめ、厚労相の諮問機関である労働政策審議会で了承されたとうことが発表されました、内容は至極もっもとな内容です。
今回のブログはその内容をご紹介するとともに、起こりうるさらに具体的なケースを考えてみたいと思います。これによってあなたは部下を自信をもって指導し叱ることも出来ますよ。

発表された指針「パワハラに該当しない例」

1.過ってぶつかること

(私見)
これは良くありますよね。廊下や執務室でたまたまぶつかってしまうとか、ちょうど腕を振り上げた時に部下が通りかかって身体にあたるとかなど。上司が誤ればまったく問題はありません。

2.精神的な攻撃

①遅刻など社会ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない労働者に対して一定程度強く注すること
②その企業の業務内容や性質に照らして重大な問題行動を行った労働者に対して一定程度強く注意すること

時間を守れ

(私見)
①新入社員が遅刻が多いとか提出物などを出さない場合、このままでは社会人として他者から信頼されなくなりますね。別室に呼んで「なぜ遅れるんだ?」と叱責する、これはパワハラにならず業務上の指導になります。ただ別室での指導が3時間以上になるとか、言葉遣いが「これでも大学を出たのか」「親の顔を見たいよ」など相手の人格を無視するような言動をするとパワハラになります。
また企業の新人研修をやっている講師に聞くと、マナー研修の際、「正しい敬語を使う」と言う講座で、受講者の新人に質問し回答を聞いた際、「それは違います。正解は・・・です」と言った場合、「恥をかかされた。パワハラだ」と言われたことがあるそうです。叱られ慣れていない新人ならありうることでしょうね。この場合も社会ルールを教えているのですからもちろんパワハラにはならないでしょう。

②重大な問題行動とは、企業の守秘内容を他社に伝えた、新聞に載るような破廉恥行為を行った、会社同僚に執拗に嫌がる事を行ったなど。一定程度強く注意するだけでなく社内規定に基づいて懲戒処分になることもあるでしょう。

3.人間関係からの切り離し

①新規に採用した労働者を育成するために短期間集中的に別室などで研修などの教育を実施すること
②懲戒規定に基づき処分を受けた労働者に対し、通常業務に復帰させるために、その前に一時的に別室で必要な研修を受けさせること

(私見)

販売員などに商品知識や挨拶、マナー、金銭の受け渡しなど業務上必要なの基本を短期集中的に教える場合がこれにあたります。
②大型バスの運転手などに法令だけでなく社内ルール(速度順守やお客様への敬語など)の知識を徹底させるために別室で行う事が該当します。

4.過大な要求

①労働者を育成するために現状よりも少し高いレベルの業務を任せること
②業務の繁忙期に、業務上の必要性から、当該業務の担当者に通常よりも一定程度多い業務の処理を任せること
鍛える

(私見)

①例えば商品説明しかやっていない販売員にクレーム対応の仕事をさせるとか、言われたことしかやって来なかった研究員に自分で研究テーマを探させ自分で進捗管理することなど。筋肉トレーニングでは通常より1~2割強い負荷を与えた方が筋肉の増強に効果的だと言いますが、それと同様に仕事も少し高いレベルの仕事に取り組んだ方が成長します。もちろん、やりっぱなしではなく何を学んだか、何が難しかったかなど振り返る時間を持たせることも必要です。

②役所や企業対象を仕事をしていると年度末の3月に研修や工事、機械設置の仕事が集中します。また予算の企画をやっている部署なら一年の内ある時期に通常の数割増の仕事がありますね。その場合、「一定程度多い業務の処理」をやってもらうことはパワハラにならないと言うことです。

5.過小な要求

労働者の能力に応じて、一定程度業務内容や業務量を低減すること
(私見)
重病やメンタルヘルス疾患で休業した従業員に対して一種の「会社でのリハビリ業務」として軽作業を課すことなどです。労働者の保護のためです。

6.個の侵害

①労働者への配慮を目的として、労働者の家族状況などについてヒアリングを行うこと
②労働者の了解を得て、当該労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療などの機微な個人情報について、必要な範囲で人事労務部門の担当者に伝達し、配慮を促すこと
訊く

(私見)
①労働者の私的権利を守るために老親の介護が必要かどうかを尋ねる場合です。現住所と違う地域への転勤を命じないようになります。介護が必要な親がいれば転勤をすると心配し仕事に身が入らないですからね。
②労働者の性的指向・性自認を人事部門や上司が知っておくことは、更衣室、トイレ、宿泊を伴う出張などでは配慮をする必要があります。同僚から差別的な言動があった時に、注意を促すことにつながります。不妊治療は時間がかかります。就業時間であっても配慮する事が望ましいでしょう。

まとめ

マネージャーの皆さんは部下に強く言ったらパワハラになるかと心配ですね。下記の場合はパワハラには当たりません。厚労省の諮問機関である労働政策審議会で了承された具体例や指針案です。
下記を参照に自信をもって部下を指導育成したいですね。
1.誤ってぶつかった場合
2.社会ルールを守らない部下に対して再三注意しても改善されない場合が一定程度強く注意すること。また企業の業務内容や性質に照らして重大な問題行動を起こした場合、部下に一定程度強く注意する
こと。
3.部下を育成するために別室で短期集中的に業務上必要な教育を行なうこと。
4.部下を育成するために少し高いレベルの業務に取り組ませること。繁忙期に部下に通常より一定程度多い業務の処理を任せること。
5.メンタル疾患などで休業した部下に対して心身が治癒され安定するまでに仕事量を少なくし、就業時間を短くするなど配慮すること。
6.部下の私的権利を守るため、老親の介護が必要かどうかを尋ねる場合。また部下の保護のために性的思考・性自認や病歴・不妊治療などの個人情報を必要な範囲で質問し、人事部門に伝えて配慮すること。

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藤原勝

藤原勝

【経営理念を浸透させることで主体性を引き出すプロデュ―サー】

ビジョンカムトゥルー株式会社 代表取締役。国内外1500人のリーダー元気に課題遂行や部下マネジメント強化の研修を行ってきた。
日本ゲシュタルト療法学会公認トレーナー。TA研究部会運営委員長。剣道教士七段。三重県生まれ、大阪育ち。
お客様の現場に入り問題解決し、「どうしてうちの会社の事がそんなにわかるのか」と言われる。経営者の経営理念を基に管理職が中期ビジョンを描き、本気の部下たちを率い実践することで国内外の企業を元気にしたいと想い東奔西走中。

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