パワハラにならない叱り方その3 部下を叱るタイミングと場所を間違えると逆効果! 

前号では「これをやったら叱れ」をお伝えしました。叱るには神経を使いますよね。2016年に日本アンガーマネジメント協会が行った調査では怒られた(叱られた)部下が「パワハラだと感じる」のが53.8%、怒った(叱った)上司がパワハラと感じているのは16・7%と感じ方に3倍以上ずれがあります。部下のためと思って叱っても逆効果になる場合があるので上司としては十分神経を使う必要があります。
叱るにはタイミングと場所があるのはご存知ですか?
タイミングが悪いといくら必要なことを叱っても部下には伝わりません。パワハラを恐れず叱るための3つめの方法は、叱るタイミングと場所についてお伝えします。これを実行することであたなた効果的な叱り方をすることが出来ますよ。

叱るのはタイミングがある

1.叱るタイミングの基本は叱る事項が起きた直後

心理学者のヘルマン・エビングハウスは実験で忘却曲線を明らかにしました。人間は忘れる動物で、行為の20分後には42%忘れ、1時間後には56%、24時間後には67%を忘れるそうです。従って叱るには行為の直後が適切でしょう。数時間後では遅いです。これは叱るだけでなく部下を褒める(承認する)ことも同じです。
時は金なり

2.部下の状況を見極める

部下が忙しく仕事をしている時に叱るのは効果的ではありません。大事なお客様を訪問する直前で準備を忙しくしている時だったり資料提出する納期の直前では仕事に集中しているので叱っても耳に入りません。部下の立場で言うと「会社のために大事な仕事をしているのにどういうセンスをしているんだ。空気を読めよ」と言いたくなります。上司への信頼を無くしますね。
また部下の体調が悪い時も集中できないので効果的ではありません。風邪気味だったりひどく疲れている時は上司の言葉が耳に入りません。またいらいらしがちなので逆切れされる可能性があります。部下の上体が一段落した時が叱るにはいいタイミングです。
よく見る

3.上司の状況はベストタイミングか

また叱る側の上司の心身のコンデイションが影響を与えます。風邪などで上司の体調が悪い時、仕事で疲れている時は良くありません。あまり寝ていない時なども良くないですね。他の仕事でトラブルがあり、そちらに気持ちが行っている時は怒りの連鎖反応が出ることがあるので、その状況を認識しておくことが必要です。部下から「叱ると言うより、単に上司の機嫌が悪いだけじゃないか。八つ当たりはやめて欲しい」と見透かされますよ。
上司として、自己の心身の状況を確認しましょう。深呼吸をして心身の調子を整えてから叱ることが望ましいと思われます。
ジャケットを肩に気楽な管理職

叱る場所を選ぶ

人前で叱らないのが大原則です。人前だと部下のプライドが傷つきます。部下にとっては他人の目が気になって叱られる内容に集中できません。私も過去何回か上司や先生に大勢の前で叱られたことがあります。苦痛でした。叱られた内容について次に気をつけようと思うよりも、部下や後輩、同僚は自分のことをどう思うかが気になりました。もう自分が部下後輩を指導しても言うことを聞かないだろうと悲観的な気持ちになります。メンツがつぶれて意気消沈します。正しいことを言っているはずの上司や先生を恨みたくなる気持ちが発生します。私個人はあまり人の好き嫌いはありませんが、「明智光秀」という文字が頭に浮かび、実際にはしませんが、復讐したくなります。

上司の中にはあえて出来る部下を人前で叱って他のメンバーに刺激を与えると言う方がいますが、かなり高等テクニックでしょう。よほど部下がタフな精神の持ち主か部下との間に信頼関係があるか、叱った後のフォローが上手くできないとお勧めしません。

まずは人のいない場所(廊下、部屋の隅)に連れ出して叱る方が無難です。個室に呼び出すのもいいですが、あまりたびたび同じ個室に呼び込むと「またあの説教部屋に行くのか」と叱られる側もうんざりします。
別室に呼ぶ際、笑顔でなく「ちょっといいか」の上司のやや怖い顔の方が、部下の側も緊張はするものの心の準備があってよいでしょう。いきなり叱られるよりは心のウオーミングアップをした方が効果的です。
1対1で会話

まとめ

1.叱るには行為の直後が記憶が新しいので効果的。数時間では部下は忘れている。
2.ただし部下が集中できない状況の時には落ち着いてから叱る。
3.自分の感情や体調が悪い時には要注意。深呼吸をして心身の調子を整えて叱る。
4.人前では叱らない。1対1が大原則。
タイミングと場所を選ぶことであなたの「叱る力」は上がります。

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藤原勝

藤原勝

【経営理念を浸透させることで主体性を引き出すプロデュ―サー】

ビジョンカムトゥルー株式会社 代表取締役。国内外1500人のリーダー元気に課題遂行や部下マネジメント強化の研修を行ってきた。
日本ゲシュタルト療法学会公認トレーナー。TA研究部会運営委員長。剣道教士七段。三重県生まれ、大阪育ち。
お客様の現場に入り問題解決し、「どうしてうちの会社の事がそんなにわかるのか」と言われる。経営者の経営理念を基に管理職が中期ビジョンを描き、本気の部下たちを率い実践することで国内外の企業を元気にしたいと想い東奔西走中。

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